衝撃のコラボ・サムラゴッチ&ヘブンズ・ドア

JOJOマニアな店主、昨日『岸辺露伴は動かない』の単行本を買っちゃった。
ジョジョの奇妙な冒険第四部の登場人物『岸辺露伴』を中心として展開するスピンオフ作品。
スピンオフの意味が解らない人はググってください。
現在執筆中の第八部ジョジョリオン&コンビニでの復刻版で昭和(我々)世代のjojoブーム復活か!?と思いながら、ネットでjojo関連情報を収集してたら・・・

なんだとおオォ〜ッ!

今年日本で旋風を巻き起こしたサムラゴッチこと、佐村河内守氏と岸部露伴氏がコラボしてるではないかぁぁぁぁぁあ!!

 
岸辺露伴は動かない

DIO「 佐村河内 !きさま!聞こえているなッ!wryyyyyyy~」
康一「エコーズact1!!」佐村河内「うわああああああ!!!!やめろおおおあおお!!!!!!」

ということで、誰が作ったかは知らないが・・よくできてるので以下抜粋してまとめてみた。

岸辺露伴、サムラゴッチと出会う

横浜市保土ヶ谷区
朝早くに到着した僕は 佐村河内の住所と思われるマンション付近の交番の巡査に道を尋ねるフリをして
『ヘブンズ・ドアー』を発動し、記憶を読み取った。
ラッキーなことに一人目で当たり。
佐村河内は毎朝近所のカフェで朝食を摂るという情報が引き出せた。

カフェに行くと、薄暗い店内の一番奥に彼は腰掛けていた。
ネットで改めて画像検索したとおりの、長髪でサングラスの男と目が合う。
視線を合わせたままゆっくりと近づいていき、彼の席の椅子に腰掛けさせてもらった。

露伴「佐村河内…守さん?」

佐村河内「……」

佐村河内「…ファンの、方ですか?」

露伴「ああ、昨日からね。ファン歴一日だがアンタを尊敬している」

佐村河内「……」

佐村河内「…すみませんが、今手話通訳を連れていないんです。ある程度であれば
   唇の動きを読む事も出来るのですが、何かご用でしたらなるべく筆談でお願いできませんか」

露伴「…いいとも。ちょうどスケッチブックとペンを持っている」シャッ シャシャシャ シャシャッ

佐村河内(速い…!)

露伴「僕もあまり弁が立つ方じゃないからな。
   見ての通り口よりも手が速い。はは、これじゃあ別の意味に聞こえてしまうかな」

露伴「おっと、聞こえていないんだったな。なかなか上手いことを言ったのに残念だ」

佐村河内「……」

【僕は岸辺露伴。漫画家だ。『ピンクダークの少年』の作者だと言えば少しは通りがいいかな?】

佐村河内「あなたが…!」

佐村河内「そういえば集英社の文芸誌であなたとの対談の依頼がありましたよ。失礼ながら
     作品を拝見した事はないのですが、お名前は僕のような無教養な者でも存じ上げています」

露伴「……」シャッ シャシャシャ シャシャッ

【それは光栄だ。僕の方も昨日初めてyoutubeで君の曲を聴いたようなにわかファンだが
 君には並外れた魅力を感じている。だからこうして会いに来させてもらったんだ】

佐村河内「…僕の曲で感動してくださったのなら、嬉しい限りです。
     よろしければ感想を教えていただけませんか?」

【クラシックについてはさほど造詣が深くない。
 専門家の前で無知を晒すのも情けないから感想は控えさせてもらうよ】

佐村河内「いえ、私の曲に惹かれたという事は、その人も私と同じ波長を持っている証拠。
     あなたもきっと、数々の苦難に打ち勝って大成されたのでしょう。
     闇の中にありながら、一筋の光をやっとの思いで掴み取ったはず。そう、僕の曲のテーマのように」

【僕は天才だからな。16歳でデビューしてこの方、漫画を描くうえでの苦労なんてした覚えがない】

佐村河内「……はは。苦労は人に見せないというわけですか。
     あえて高慢な態度を取っておられるが、実に謙虚な方だ」     

【褒め合いはこのくらいにして、本題に入らせてもらってもいいかな】

佐村河内「…なんでしょう」

【君、いま相当ヤバイ状況らしいな。ゴーストライター問題の記事が来週にも発表されそうなんだろ?】

佐村河内「……」
佐村河内「なるほど、そういう事ですか…あなたとはいい関係を築けそうだと思ったのに残念だ」

【別にその事をとやかく言うつもりはない。君に魅力を感じているというのは本心さ】

佐村河内「……」

露伴「…なぁ佐村河内さん、本当は耳も聞こえているんだろう? 
   まどろっこしい筆談なんて無しにしないか」

露伴「僕は今、自前のスケッチブックを使っているんだぜ?」

露伴「別にページをケチってるわけじゃないが
   スケッチブックってのは漫画家にとっての商売道具だ。君もアーティストなら
   それを無駄に使わせてるって事を、もう少し誠意を持って考えてもらいたいものだね」

佐村河内「……すまないが、君のまくしたてるような唇の動きは読み取り辛い。
     言いたい事があれば筆談でお願いする」

露伴「そうかい…それは失礼したな」シャッ シャシャシャ シャシャッ

【正直言って僕は、君の交響曲にベートーベンを感じなかった。まぁ君が作曲していないのだから当然だが】

【それでも僕は、君こそが現代のベートーベンで間違いないと思うんだ】

佐村河内「……」

【口先で人々を欺き、障害者を装って世間の同情を引き、心の中で舌を出しながら
 自分の実力だけでは決して掴むことなど出来なかったであろう、理想の人生を手に入れている】

【正直者が馬鹿を見る世の中で、君は実に賢く生きている。その反骨精神に溢れる生き様は、まさにベートーベンだ】

佐村河内「…さすが、漫画家先生は言葉選びが秀逸だ。皮肉ひとつ取っても洒落が効いている」

【皮肉なんかじゃないさ。君はそこらのケチなペテン師とはワケが違う】
【普通の人間なら良心のブレーキが掛ってしまうような嘘でも平気でつき続け
 ついには世界まで相手どった詐欺を働いたんだからな。君のその精神力の源は何にあるのか、非常に興味深い】

佐村河内「…露伴くん。確かに僕を快く思わない連中は大勢いるし、謂れの無い噂が立っている事も知ってるよ」
     
佐村河内「だけど、僕の音楽を愛する心と
     慕ってくれている多くのファン達の名誉に誓って断言しよう。僕は潔白であると」

露伴「イイねイイねェ! そうこなくっちゃあ面白くないよなぁ!」シャッ シャシャシャ シャシャッ

【数日後にはスキャンダルで全てを失うかもしれない男がこうも白々しい嘘がつけるものなのか!】

佐村河内「……」

露伴「まぁ君の事だから事態を打開する切り札でもあるんだろうが」

佐村河内「……」

露伴「それとも、その余裕も何の根拠もない虚勢だったりするのかな? どちらにしろやはり超一流だよ君は」
露伴「詐欺師の、な」

佐村河内「……」ゴゴゴゴゴ

露伴「おっと…筆談で、だったな」
露伴「すまない。君の反応を見ていると耳が聞こえていないって事をつい忘れてしまってね」

佐村河内「……」

【要するに僕は君について取材がしたいのだが、受けてもらえないだろうか】

佐村河内「…人を散々嘘つき呼ばわりしておきながら、よく抜け抜けとそんな頼み事が出来るな」

【僕が興味あるのは作曲家としての君なんかじゃなく、度を越した嘘つきの方の君なんだから仕方ないだろう?】

佐村河内「…対談の依頼を承諾する前に君に会えて良かった。
     こんな無礼な男だとは思わなかったよ。これで失礼する」

露伴「……」シャッ シャシャシャ シャシャッ
【もちろん礼はするぜ。僕なら君のピンチを救ってやれるかもしれない】

佐村河内「…!」

【君が望むのであれば、その指に鍵盤を駆け巡る超絶技巧を授けてやる事だって出来るし
 嘘がバレそうな時に必要であれば、一時的に本当に聴覚を失わせる事だって出来る】

露伴「君にとっても、悪いハナシじゃないはずだぜ」ニヤリ

佐村河内「……」
佐村河内「ふん…君こそ詐欺師になった方がいいんじゃないのか?
     まぁ、そんな幼稚なハッタリに騙される馬鹿はいないだろうけどね」

【ハッタリなんかじゃないさ。君と違って僕には本当に不思議な力があるんだ】

佐村河内「…だったら」

【証明してみせろ、かい?】

佐村河内「…当然だろう。そんな馬鹿げた話を信じろと言う方が無理がある」

【それはもちろん可能なんだが、ひとつ問題がある。まず僕の能力を簡単に説明すると
 『ある条件のもとに支配下に置いた対象に命令を与えれば、それを強制することが出来る』
 という便利なものと思ってくれればいいかな】
【時速70kmで吹っ飛べと命令すれば、人体工学的に不可能な勢いであろうが無視して飛んでいくし
 イタリア語を話せるようになれと命令すれば、駅前留学に無駄金払わなくたってペラペラにしてやれる】

佐村河内「……」

【ただ、厄介なのは相手を支配下に置いてしまうと
 その記憶や思考まで読み取ってしまうという事なんだ】
【僕はね、まだまだ君の嘘に付き合っていたいんだよ】

【それなのに、今の段階で能力を行使してしまっては、君の本音まで読み取ってしまう事になる。
 能力で手を貸すのは、あくまで君がどうしようもなく追い詰められた時まで待ってもらいたいんだ】

佐村河内「…やれやれ、話にならないな」
佐村河内「いや、もしかすると露伴くんは僕なんかよりよっぽど深い闇を抱えているのかもしれないな」
佐村河内「君の妄想は、もはや精神疾患を疑うレベルだよ。良ければいい医者を紹介してやろうか」

【この能力は僕の強力な武器であると同時に、それを他人に知られる事は最大の弱味でもあるんだぜ?】
【それをわざわざ僕の方から教えているんだ。もう少し信頼してはもらえないかな】
【それとも、根っからの嘘つきの君に『腹を割ってくれ』なんてのは出来ない相談かい?】

佐村河内「…あくまで人を嘘つき呼ばわりか」

露伴「…なぁ、佐村河内さん。
   これは僕の独り言のようなものだからペンを置いて勝手に喋らせてもらうが」

露伴「『嘘』ってのは、相手に『本心』を悟られないからこそ成り立つものだよな」

露伴「君の耳が本当に聞こえているかどうかなんて
   専門家がその気になって調べない限り判断のしようがないし
   そのサングラスの奥で君の目が今どんな風に泳いでいるかなんて僕には分からない」

露伴「『隠したり誤魔化したり出来るからこそ機能する』それが『嘘』ってものだよなぁ?」

佐村河内「……」

露伴「だから、『凡人』でありながら『嘘』の力だけでのし上がってきた君に
   『天才』の僕が『不思議な力』でもって『本音』を暴いてしまうなんて事はフェアじゃないと思う」
露伴「『嘘つき』としてのあんたに敬意を払っているからこそ、そうするんだぜ」

佐村河内「……」

露伴「なぁ、もっと聞かせてくれよ…『嘘』で塗り固められた君の話を…」
露伴「それで僕の気が済んだら『礼』はしてやるさ…」

佐村河内「……」

佐村河内「…君からは、本当に深い闇を感じる。光など一筋も射さない、邪悪と呼べる程のどす黒い闇だ」

露伴「ははは…随分な言われようだな」

佐村河内「これ以上君といると、僕までその闇に呑まれてしまいそうだ。今度こそ帰らせてもらうよ」ガタッ

露伴「…おいおい、杖なしで立ち上がるほど慌てて帰ることはないだろう?」

佐村河内「…!」

露伴「来週、秘密を暴露された君がどんな嘘で修羅場を切り抜けるのか楽しみにしてるぜ」

佐村河内「くっ…!」スタスタスタ

露伴(佐村河内守…やはり面白い男だ)


僕が佐村河内に持ち掛けた相談は、いわば『悪魔の囁き』のようなものだった。そう、僕は彼を試したんだ。
彼が僕のハナシに少しでも興味を示していたら、佐村河内守とは所詮その程度の男だったと見捨てるつもりでいた。
あの男にも詐欺師としてのプライドがあるならば『嘘』は最後まで隠し通す事で『真実』にしなければならない。
僕のスタンド能力に頼って今までついてきた『嘘』を『真実』にする気なら、それはただの『ズル』だからな。
そんなものに頼らなくても、佐村河内ならば事態を打開する切り札くらい用意してあるのだろう。
まぁ、単にあんな眉唾物のハナシじゃ信じられなかっただけかもしれないが。

次の週の5日、週刊誌発売の前日に佐村河内は弁護士を通じて関係各所に謝罪文を送り
ゴーストライター問題は公のものとなった。何のことはない、彼には切り札なんて元からなかったのだ
密かに彼の逆転劇を期待していた僕は、すっかり失望させられてしまった。買い被りに過ぎなかったか、と。
マスメディアは連日この話題で持ちきりで、佐村河内の悪行は次々と露呈していった。
ニュース番組は彼のゴーストライターであった新垣隆氏の会見を繰り返し流しているし
ネット掲示板では一連の騒動をめぐってちょっとしたお祭り騒ぎになっている。
一部の現代音楽愛好家の間での有名人に過ぎなかった佐村河内守の名は、悪名として広く世間に知れ渡り
『3年前から聴力が回復している』という彼自筆の謝罪文が公開されたあたりで、僕は完全に興味を失った。
あの男ならもう少し楽しませてくれるものだと思っていたのに

世界を手玉に取った詐欺師にしては、実にツマらない幕切れだった。

しかしそれ以上に不愉快だったのは、問題が発覚した途端に佐村河内の関係者どもが一斉に掌を返し
口を揃えて「我々は本当は彼の嘘を見抜いていた」というアピールを始めた事だ。
自分達にまで責任が飛び火するのを恐れてか、単に世間から笑い者にされるのが嫌なのか
それとも本当に気付いていながら、金になるうちだけ彼にすり寄っていたのか…
何にせよ、彼が嘘の力で手に入れてきたものとは、そういうものなんだろう。
その嘘が一度明るみに出れば、魔法が解けたように全てがフッと消えてしまう。
独り残された佐村河内は、これから散々世間のバッシングを浴び、人間性を否定されて
その後はもう、誰からも忘れ去られてしまうのだろう。

僕だって仕事に追われるまま彼の事など忘れかけていた。

そんなある日のこと、一通のファンレターが届いたんだ…

某県某市 佐村河内所有の別荘

ピンポーン♪
ガチャ…
露伴「やぁ、調子はどうだい」

佐村河内「……」

露伴「ひょっとして、まだ筆談をお望みかな?」

佐村河内「…意地の悪い事を言わないでくれ。
     ここもマスコミに嗅ぎ付けられそうなんだ。さぁ早く入って」

露伴「ふふ。初めて口頭で会話が成立したな」

佐村河内「しかし、あんな手紙を出しただけで本当に来てもらえるとは思わなかったよ」

露伴「僕はファンレターには全て目を通す事にしている。たまに鋭い意見もあるからね」

露伴「でもまさか、手紙の相手が君で内緒で居どころを知らせてくるなんて思いもしなかったが」

佐村河内「…なんだか無性に露伴くんに会いたくなってしまってね」

露伴「それは嘘というよりはお世辞だな」

佐村河内「お世辞でわざわざこんな場所まで呼び出したりはしないさ」

佐村河内「…僕は、今回の騒動で全てを失ったよ」

露伴「名前だけなら以前にも増して広く世間に知れ渡ったじゃないか」

佐村河内「はは…そうだね。悪党として歴史に名が残るんだろうな」

露伴「それに君のCDは回収が検討されているのに
   事件の影響であまりに売れるものだから店側が応じないってハナシだぜ?」

佐村河内「いくら売り上げが伸びたところで、僕にはもう著作権が無いからな。一銭も入ってこないよ」

露伴「…なぁ、君が本当に欲しかったのは金や名誉なんてツマらないものじゃないはずだろう?」
露伴「なぜ君がそうまで嘘をつき続けたのか、そろそろ本音が知りたいんだ。君の口から直接な」

佐村河内「……露伴くん、僕は確かに嘘つきだ。大嘘つきの詐欺師だよ」
佐村河内「初めはね、君の言うツマらない欲の為に過ぎなかったさ…」
佐村河内「いい暮らしがしたい、世間からちやほやされたい…
     その為に人の心を利用し、裏切ることを繰り返してきた」
佐村河内「だけど、いつしか有名になり、様々な人達と知り合うなかで次第に考えが変わったんだ」
佐村河内「世の中にはね、本当に多くの悲しみや不幸を抱えた人々がいるんだよ。
     彼らを知れば知るほど自分がいかに愚かだったか気付かされた…
     こんな嘘つきを慕ってくれる、真っ直ぐな瞳にはとても耐えられなかった…」

佐村河内「いっそ全てを吐き出してしまおうかと思った事だって何度もあったけど
     それじゃあいけないと覚悟を決めたんだ。僕を信じてくれた純粋な気持ちを裏切ってはいけない。
     これ以上彼らを悲しませないためにも、自分は偽りのベートーベンであり続けねばならないんだと…」

露伴「…なんだいそれは。洒落のつもりか?」
露伴「まさかそんな理由で嘘をつき続けたとでも言うのかい?
   嘘の名人の君の言葉とは思えない…いくらなんでもそんな偽善はナンセンスじゃないか」

佐村河内「…この想いだけは、嘘に塗り固められた僕に残された、たった一つの真実さ」
佐村河内「いいかい、全てが偽りとはいえ
     『障害を持ちながらその苦難に打ち勝った男が美しい旋律を生み出す』
     そんな安っぽいストーリーにだって、励まされる者がこの辛い時代には大勢いるんだ」
佐村河内「僕は、彼らの光でありたいと願う…これからもずっと…!」

露伴「ふぅん…まぁいいだろう。そういう事にしておいてやる」
露伴「だけど、ここまで盛大に悪事を暴露された君に再びそんなマネが出来ると思うのかい?」

佐村河内「…簡単なことだ。僕の『嘘』を『真実』にして、真のベートーベンになればいい」
佐村河内「そこでだ、君の『不思議な力』とやらを貸してもらいたい…」

露伴「そうきたか…」

佐村河内「嘘ばかりついてきた僕にだから分かる…あの時の君の目は真実を語っている目だった…」
佐村河内「本当に出来るんだろう…? この僕を、天才音楽家にすることが…!」

佐村河内「さぁ露伴くん! 世界中で救いを必要としている人達の為にも
     君と僕とで希望の旋律を奏でようじゃないか!」

露伴「…失望したよ。君の嘘には『信念』のようなものを感じていたんだが」
露伴「僕を利用するならまだしも、そんな風に一方的にすがり付いてくるようじゃお仕舞だな」
露伴「それにしても、今のくだらない作り話には本当に幻滅させられた。何が救いを必要としている人達だ。
   何が希望の旋律だ。結局自分可愛さに保身に走っているだけじゃないか」

佐村河内「信じてくれ…大勢の人々を傷つけてきた僕だからこそ
     どうしてもならなくてはいけないんだよ…」

佐村河内「闇を照らす…ひと筋の光に…!

露伴「…もう君の嘘は聞きたくない。不愉快だ」

佐村河内「待ってくれ! 君になら理解してもらえるはずだ…」

露伴「理解…しろだって…?」

佐村河内「君だって漫画を描く事で多くの読者を楽しませ、感動を与えてきただろう」
佐村河内「その喜びや素晴らしさを誰よりも知っている君ならば、僕のこの想いも分かってくれるよな…?」

露伴「くっ…!」
     

露伴「貴様の低俗なペテンと僕の高尚な漫画を一緒にするなあ───ッ!!」
露伴「ヘブンズ・ドア──ッ(天国への扉)!!

佐村河内「…!?」

バラバラバラ

露伴「さぁ、これが君のお望みの『スタンド能力』だ…」

佐村河内「あ、あぁ…!」
バラバラバラ バラバラバラ

露伴「君の身体は今『本』に変えられたのさ。嘘まみれの人生を綴った一冊の『本』にな」

佐村河内「あ、ああぁ…」

露伴「そして、ページの余白を探し命令を書きこめば、君を意のままに操る事が出来る」
露伴「確かにこの能力を使えば君を天才音楽家にしてやる事だって出来る…」
露伴「しかし、君に与える命令はこうだ…」

露伴「【一切の聴力を失う】ッ!!」

佐村河内「……!!」

露伴「さぁ、ページの余白を探すとしよう。今度こそ君は、真の闇に怯えるんだ…」

佐村河内「……」

ペラッ ペラッ…

ペラッ ペラッ ペラッ…

露伴「……こ、これはッ!?」

佐村河内「……」

露伴「…やられたよ、佐村河内守」

佐村河内「……」

露伴「悔しいが、僕の完敗だ」


ドシュ ドシュ ドシュッ!


【一切の聴力を失う】


バ────────ン!!

その後間もなくして、佐村河内は公の場に姿を現した。彼の謝罪会見の様子がテレビに映し出されている…

記者A「佐村河内さん! 一連の騒動についてはどのようにお考えですか!?」

佐村河内「あ、あぁ…ぼ、ぼぅのしてきたこぉは…けぃて…ゆぅされる…こぉではなぐ…」

記者B「あなたが騙してきた多くの方々に謝罪の気持ちは!?」

佐村河内「いかぁる裁きであぁても…いさぁぎよぐ…う、うげぇれよぉと、おもて…いま、す…」

記者C「原爆や震災などの多くの犠牲者の魂を利用して、人として心が痛まないのですか!?」

佐村河内「いまぁでみなさぁから騙し取ったおかぇは…一生かぁっても…おかぇし、します…」

記者D「佐村河内さん! さっきから答えになっていませんよ!? 本当に謝罪の気持ちがあるのですか!?」

佐村河内「ぼぅは…耳が…ちゃんろ、聞これて…いましゅ…」

記者E「そんな事はみんな知っています! 聞こえているならちゃんと答えてください!」

佐村河内「ぼぅ…耳…聞これてましゅ… うろじゃ…あぃませぇん…」

記者F「何なんだアンタ! ふざけているのかッ!?」



露伴「……」プチッ


本に変えた佐村河内の心理は、読み取ることは出来ても理解することは出来なかった。
彼の本はどのページも様々な思考や言葉で埋め尽くされていて
余白を探すのもひと苦労な程だったからだ。
そこに記されていたのは、金銭欲であったり、自己顕示欲であったり
得たものを失う事への恐怖心であったり
騙された者達を嘲笑う気持ちであったり、騙した者達への罪悪感であったり
世間を見返してやりたいという虚栄心であったり、不幸な人々への純粋な同情であったり、実に様々だった。
嘘で塗り固められた人間というのは、ここまで複雑な葛藤を抱えているのかと驚かされたものだ。
僕が初めて佐村河内の特番を見た時、彼が書いたとされる創作ノートが映っていたが
そのページはおびただしい数の音符で埋め尽くされていて、どれがどの曲のものなのか分からない程であり
それが本になった彼にとてもよく似ているなと、ふと頭をよぎった。
あれ程の思考の反芻に埋め尽くされて、彼の本心はいったい何処にいってしまったのか。
もしかすると、佐村河内自身も見失ってしまっているのかもしれない。

ただ、ページをめくっているうちにある文章に目が止まった。
そこにはこう書かれていた。

【この岸辺露伴という男にどうにかして一泡吹かせてやりたい】
【そして願わくば、もう一度くらい世間を盛大に欺いてやりたい】

そう、僕はまんまと利用されてしまったわけだ。
彼はあえて僕を怒らせるような態度をとり、ガラにもなく『灸をすえてやる』なんて気持ちにさせたのだ。
佐村河内の真の狙いは『天才音楽家』にしてもらう事などではなく
『本当に耳が聞こえなくなること』の方を望んでいたのだ。
その理由は恐らくこうだ。
近く、横浜市は佐村河内に精密な聴力検査を受けさせるらしい。
すでに耳が聞こえていると白状しているにもかかわらず、世間は意地悪くその結果を待っている。
そこで彼の耳が実は全く聞こえていなかったと診断されれば…
きっと佐村河内は、その時の民衆のあっけにとられた顔を想像して心の中でほくそ笑んでいるに違いない。

なぜ佐村河内はそうまでして嘘をつきたがるのか。

聴力を完全に失って、無音の恐怖に怯える事になっても世間を欺かずにはいられないのだろうか。
確かに、自分のついた嘘に誰かがまんまと引っかかるのは面白い。
だけど、嘘なんて所詮それだけのものだ。ははは、と笑って終わってしまう。
だが佐村河内はその快感に味を占めて、どうしようもないくらい病みつきになってしまったのかもしれない。
まぁそんな事はいくら考えたって無駄な事だ。
本人にだって分かっていないのかもしれないんだからな。
ただ、僕は彼を見ていると小学校の頃クラスに必ず一人はいたような少年を思い出すんだ。
集団にうまく馴染めず、いつもくだらない嘘をついて周りの関心を惹こうとする悪ガキを。
そういう子供って、時々度を越した嘘をついてクラスメートから糾弾されてしまうものだけど
自分が悪いと分かっているのに後に引く事も出来ず、ムキになって更に嘘を重ねてしまったりするんだよな。
佐村河内を見ていると、何ごとにも素直になれずにいたガキの頃の自分と重なる。
そして、そんな彼の事を僕はどうにも嫌いになれないのだった…

『佐村河内』─終わり



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これ、出版できるんじゃね?


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最終更新日 2014/5/21
麺飯茶家浪花
香川県高松市林町1511-1